市民総参加のまちづくり 長野県岡谷市
1.概要
平成16年10月、「岡谷市市民総参加のまちづくり基本条例」を制定。
市長のひと声、「市民参加じゃない。『総』参加だ」でこのタイトルになった。
具体的展開として、18年度に「岡谷市わくわくするまちづくり推進事業補助金」制度を創設したほか、市民懇話会の開催、子ども会議、などの事業を展開。ほかに生涯学習の一環と位置づけた「市民総参加のまちづくり講座」として、リーダー養成、基本条例の学習、タウンウォッチング、市長との意見交換の場を作っている。
さらに市行財政改革プランも副題を「市民総参加による特色あるまちづくりをめざして」とし、市民が25回にわたる審議会を開催して策定した。
2.市民総参加のまちづくり条例
目指す理念は「活気に満ちた将来に夢が持てるわくわくするまち」。
わくわくしないと市民は参加しない。キーワードは「わくわく」。
理念だけでなく「方法」を具体的に示す条例にしたところが特徴。
その方法として、
・市民懇話会の設置
・男女共同、情報公開、公募のあり方についてなど各種審議会に市民が参画
・「市民総参加のまちづくりサロン」。テーマに基づき市民が自由に意見交換
これまで5回開催。90人が参加。テーマは「子育てしやすい環境づくり」「ごみ減量」
など。月1回開催。
・子ども会議。年1、2回。小中学生
・パブリックコメントも要綱を整備して実施
・まちづくりバンク。ボランティア登録
・まちづくりリーダーの育成。人材育成支援
→これらは市民会議からの提案によるもの。後2者はこれから取組み。
→今後、条例に明記した「評価の方法」について具体化する。
3.わくわくするまちづくり推進事業補助金制度
・制度のPRチラシより。
…岡谷市が好きだぁー!
もっと活気のあるまちにしたい。
自分も何か手伝いたい。
…市民の皆さんの“熱い想い”を少しでも後押しできるよう、市民の皆さんが自ら企画
し、実施する事業に対し助成を行う制度です。
・既存の「地域活性化補助金」を発展させた。経済部商業観光課地域活性担当が所管。
・事業費の1/2を補助。期間は3年間。4年目からは自立を。資金の基盤がしっかりし
ている必要がある。必要なのは「意欲と基盤」。上限50万円。設備投資の場合は100
万円。
・応募に対し市民で組織する審査会が審査。その答申を経て採用を決定。
・採用例
○マレットゴルフ愛好会が同ゴルフの普及で健康増進と地域住民の親睦を図る事業
○星空観察会。子どもたちの星や宇宙、科学に興味を持つきっかけをつくる
○自然環境保全プロジェクト。
○森林整備ボランティア。
○横河川ゆめパーク事業。住民の手で川の景観保全と美化。
○子どもの居場所“集まれ!あやめ基地”
・年間補助総額、18年度120万円、19年度170万円、20年度125万円…サンセット方
式。23年度まで続く。
4.市民の皆さんと市との共同による事業(ユニークな取組みを抽出)
・市広報への取材協力。寄稿、取材、一品料理への応募など。
・消費者ボニター(ボランティアによるモニター)。気づいたことを随時連絡。
・サンデーリサイクル。決められた収集日に出せない人のために、大型店の協力を得て
毎月最終日曜日に実施。
・災害時要援護者支援事業。
・要援護高齢者の見守り
・停留所の雪かき協力
・都市公園、緑地の管理。地元と覚書を締結。清掃、草刈りなど。
・学びのおかやサポート事業。学校教育、社会教育への派遣人材を登録。
・学童クラブへのボランティア参画。夏休みなどに子育て支援。
5.感想
市町合併論議が進むさなかに、市長が「自治基本条例を作ろう」と提唱。「合併の暁には作ろう」というのが一般的なあり方かと思いますが、「合併後の新市でも使えるものを作ろう」と。時代を読み、ためらわずに決断した市長の意気込みが感じられます。
前述したように、岡谷市の条例のユニークな点は理念にとどまらず具現の「方法」にまで及んだこと、そしてこれから「評価の方法」まで具体化していこうとしていることです。
そして市の行財政改革プランの表紙にまで「市民総参加の…」の副題が踊っていること。
立ち上げられたばかりのこの条例に基づくまちづくりで、まだ具体化は始まったばかり。そこには過去の補助金制度を発展させたものや、従来の市民活動を引き継ぐメニューも散見されますが、確かに意欲的に、走り出しているという実感が伝わってきます。
先日あるご婦人から、「丸亀市でも春は桜、秋は紅葉を楽しめる名所を作ってほしい」との声が寄せられました。聡明な考えをお持ちの方で、私が語る市民参画、市民活動推進の考えも理解してくださった上で、「管理は市民がするけれども、やはり主唱は市がしてくれないと」とのご意見でした。
テレビの囲碁・将棋の番組のように、「そうきたか…。じゃあ次の一手は」と考えるのは楽しいですが、現実問題、議論を楽しんでばかりはいられません。
河川の土手に桜並木を作るとしましょう。
誰が植えるのか。誰が管理をするのか。
市が植えて、住民が管理をするのか。
桜を楽しむ市内外の客はそれでいいが、管理にあたる住民は引き受けてくださるのか。
それとも、住民発意で市は土地を提供し、すべて住民が行なうのか。
それにしても一体、誰が?
私は、この例でいうところの「土手に桜を」という市民の声が盛り上がりを見せてきたなら、それで受益するのは一地域の方々ではないのだから一定の助成を市もするべきだとは思いますが、さて、どの程度の市民が声をあげれば取り上げるべきなのでしょうか。
やはり、この奥さんが主導者となり、市に意見を言い、そして仲間を集めることからすべてが始まるのではないでしょうか。
この奥さんのおっしゃる「まずは市役所が」というお声ももっともですが、要は市役所は、市民のニーズの大小により、可否を決するものであり、いわばそれは、市民の運動量に比例する、ということなのではないでしょうか。
そしてまず、市役所にお願いしたいことは、こうしたニーズを細かくキャッチするシステムを整えることです。もちろん議会人もそのシステムの一員です。
このような場合に、もし、このご婦人が気軽に声を出せる、岡谷市の前述の「サロン」のようなものがあればどうでしょう。
丸亀市でも自治基本条例がすでに制定されました。ここから望まれるのはもちろん内容の具体化ですが、そのプランを考えるのは、一体誰なのでしょうか。
市民すべての個々のニーズを叶えてさしあげることはできないですが、その声をテーブルに上げ、他の人の声を照射すれば、また別のプランで夢は実現できるかも知れません。
「市にはお金がありません」で門前払いをできる時代は終わりました。「管理は私たちがする」「お金も私たちがなんとかする」という市民を、どう市政に取り込んでいくのか。逆に、市民のニーズこそ市政の中心と捉えた市の動きをどう作るのか、それが丸亀市でも緊急の課題と、常々考えております。